戦闘機を操縦できても、目的地に着けるとは限らない

ビットコイン・投資

はじめに

投資手法の選び方は、単に難しい方法を選ぶことではありません。この記事では、前回の記事の続きとして、投資の考え方を戦闘機、旅客機、船という乗り物に例えて考えます。

この記事は、前回の「努力と結果が一致しないとき、人はなぜ怒るのか」から続く内容です。

前回の記事では、市場は努力量や技術の高さを公平に採点してくれる場所ではない、と書きました。今回は、その投資の世界を乗り物に例えながら考えてみます。

投資には、同じ「資産を増やす行為」とは思えないほど、性質の異なる方法があります。FX、信用取引、個別株の短期売買、デイトレード、先物、オプション、インデックス積立、そして個別資産の長期保有。必要な知識も、判断の頻度も、負うリスクも大きく異なります。

私は以前、難しい投資ほど優れていると思っていました。高度な知識を身につけ、複雑な戦略を操れる人ほど、市場で大きな成果を得られるように見えたからです。

しかし、長く相場を経験するうちに、その考えは変わりました。

投資の目的は、操縦技術を競うことではありません。

生き残り、自分が選んだ目的地へ着くことです。

戦闘機を操縦していた頃

私は以前、日経225先物やオプション取引を行っていました。

日経225先物の世界は、同じ売買でも、株や投資信託を買って保有する投資とは大きく異なります。さらにオプション取引では、デルタやガンマなどのリスク管理指標を確認し、相場が動けば建玉を調整し、証拠金や損益曲線の変化にも対応しなければなりません。

FXや信用取引にも共通する部分があります。レバレッジがかかる以上、小さな値動きでも資産は大きく変動します。個別株の短期売買も、決算、材料、需給、市場心理を読み違えれば、短時間で損失が広がります。

これらを乗り物に例えるなら、戦闘機です。

速度があり、自分の判断で自由に方向を変えられます。上昇相場だけでなく、下落相場でも利益を狙うことができ、空売りやヘッジという武器も持っています。

その代わり、操縦者には絶え間ない判断が求められます。

性能が高いほど、操作を誤ったときの代償も大きくなるのです。

技術があっても墜落する

日経225が一定の範囲を動くレンジ相場では、非常に相性のよい戦略を使っていた時期がありました。相場の動きに合わせてポジションを調整できる間は、安定して利益を積み上げられます。

ところが、一方向へ異常な速度で動く相場に入ると、調整が追いつかなくなります。リスク指標を修正しても、その間に相場はさらに進みます。損失が拡大し、ロスカットをためらえば、最後には分析ではなく祈りまで入ってしまいます。

これは、単純に技術がなかったからではありません。

技術で対応できる速度を、相場が超えてしまったのです。

このとき、私は大きな損失を抱えました。その経験から別の戦略へ移行しましたが、当然ながら、それも万能ではありませんでした。

どの戦略にも弱点があります。ある相場環境に強い方法が、環境の変化によって突然機能しなくなることもあります。

戦闘機は高性能です。しかし、高性能だからこそ、相場環境、判断、操作のどれか一つが狂えば墜落します。

旅客機の乗客は操縦しない

一方、インデックス積立や持ち株会はどうでしょうか。

毎月、決められた金額を買い、長期間保有する。基本的な操作はそれだけです。戦闘機を操縦していた頃の私から見ると、旅客機の座席に座り、窓の外を眺めながら運ばれているように見えました。

乗客は操縦席の計器を見ません。機体の角度を調整する必要もなければ、風向きを読んで進路を決める必要もありません。多少の揺れがあっても、運航を続けるのは乗客ではなく、仕組みの側です。

当時の私には、自分の資産の行方を他人任せにしているようにも見えました。

それでも、長期間乗り続けた人の多くは、目的地へ近づいていきます。

ここに、投資の面白さと不条理があります。前回の記事でも書いたように、努力量と到達率は必ずしも一致しません。

複雑な計器を扱っていた戦闘機の操縦者が墜落し、ほとんど何もしていないように見えた旅客機の乗客が目的地へ着くことがあります。

ただし、これは旅客機の乗客に技術がないという意味ではありません。自分で操縦しない仕組みを選び、途中の揺れに耐え、目的地まで降りずに乗り続けることも、立派な判断です。

旅客機が大きく高度を落とす日もある

もちろん、戦闘機が常に劣っているわけではありません。

暴落局面では、空売りやヘッジを使える投資家が大きな利益を得ることがあります。買い持ちだけの投資家が終わりの見えない下落に苦しむ横で、戦闘機は急降下しながら利益を積み上げます。

自分で操縦できない旅客機の乗客は、資産が目減りしていくのを見ながら、相場が回復するまで耐えるしかありません。暴落が数年単位で続けば、いつ終わるのか分からない恐怖にもさらされます。

その間、戦闘機の操縦者は、自分の判断で下落を利益へ変えることができます。その局面だけを見れば、戦闘機の圧勝です。暴落は、大きな利益や資産逆転を実現する機会にもなります。

しかし、それは局地戦の勝利です。

戦闘機は、その後も次の戦場へ向かわなければなりません。下落相場で成功した経験に引きずられ、相場が上昇へ転じても売り続ければ、今度は戦闘機側が撃墜されます。

特に、売りから入る取引で一方的な上昇相場にはまれば、損失は上限なく拡大し得ます。

旅客機も激しく揺れ、ときには長期間、高度を下げます。それでも、広く分散された市場が長期的に成長するという前提が維持される限り、運航を続けることができます。

戦闘機と旅客機では、そもそも勝利の定義が違います。

戦闘機は局面ごとの勝負を取りに行き、旅客機は途中の戦闘を避けながら、決められた航路を長く飛び続けます。

実は、二択ではなかった

以前の私は、投資には二つの道しかないように考えていました。

自分で相場を読み、技術を使って利益を取りに行く戦闘機か。市場全体の成長を信じ、仕組みに運んでもらう旅客機か。

しかし、長く相場を観測しているうちに、実はもう一つの乗り物があることに気づきました。

船です。

旅客機と船は何が違うのか

旅客機と船は、どちらも長距離を移動する乗り物です。頻繁に戦う必要もなく、短期的な値動きへ毎回反応する必要もありません。そのため、投資に置き換えると、どちらも同じ長期保有に見えます。

しかし、両者には大きな違いがあります。

旅客機には、あらかじめ決められた路線があります。出発地と到着地、飛行経路、運航方法は、基本的に仕組みの側が決めています。乗客が行うのは、その路線を選び、座席に座り、目的地まで途中で降りずにいることです。

インデックス積立もこれに近いものです。特定の企業や資産を一つずつ選ぶのではなく、市場全体を構成する仕組みに乗ります。どの企業が伸び、どの企業が衰退するかを細かく判断しなくても、指数の側が銘柄の入れ替えや分散を行います。

一方、船の航路は、最初から完全には決まっていません。

どの海へ出るのか。何を積むのか。どの港を目指すのか。海流を利用するのか、嵐を避けて迂回するのか。予定どおり進むのか、途中の港で停泊するのか。

それらを船長自身が考えます。

旅客機は、完成された航路に乗る投資です。

船は、自分の仮説を持ち、自分で航路を設計する投資です。

船に乗るとは、放置することではない

今の私は、ビットコインを長期保有しています。

毎日売買するわけではありません。短期的な値動きに合わせて頻繁に進路を変えることもありません。しかし、何も考えずに眠っているわけでもありません。

ビットコインの市場構造、各国の規制や税制、ETFや金融機関の参入、保管方法、レンディングの条件、世界経済の変化を観測しています。価格が上がったか下がったかだけでなく、航海を続ける前提そのものが壊れていないかを確認しています。

必要であれば、保管先を変えることもあります。レンディングを縮小することもあります。資産価格や生活設計によっては、一部を売却し、積み荷を軽くすることもあります。

また、相場環境が大きく変わった場合に備え、売りやヘッジの知識を完全に捨てているわけでもありません。ただし、それは毎日出撃するためではなく、航海を守るための非常用装備として残しています。

これは、戦闘機のような短期操縦ではありません。しかし、旅客機のように、すべてを仕組みに任せているわけでもありません。

毎日舵を切る必要はない。

それでも、海図から目を離してよいわけではない。

この距離感が、私にとっての航海です。

航海に例える意味

船は、戦闘機より遅く、旅客機より不確実です。決められた時刻に目的地へ着く保証もありません。途中で嵐に遭うかもしれず、海流が変われば、予定していた航路を修正する必要もあります。

それでも船を選ぶ意味は、自分が信じる資産を積み、自分で海図を読み、自分の意思で航路を決められることにあります。

インデックス積立は、市場全体の成長という大きな機体へ乗る方法です。これも非常に優れた選択であり、旅客機でも十分に生き残れます。むしろ、自分で個別の航路を設計する必要がない分、多くの人にとっては旅客機の方が安全でしょう。

船が旅客機より優れているわけではありません。

違うのは、誰に運んでもらうかです。

旅客機では、市場の仕組みに運んでもらいます。船では、自分の仮説と判断で航路を進みます。

私は、市場全体へ完全に任せるよりも、一つの資産を深く観測し、その構造が変わっていないかを自分で確かめながら進む方が、自分には合っていました。

個別株、信用取引、先物、オプション。さまざまな乗り物を経験した末に、私は船を選びました。

あれほど戦わなくてもよかった

船で航海するようになってから、不思議な感覚がありました。

あれほど頑張って戦わなくてもよかったのではないか。

以前は、高度な技術で相場を攻略しなければ、大きな利益は得られないと思っていました。複雑な戦略を理解し、相場の変化へ素早く対応できることに価値があると考えていました。

しかし、実際には、優れた資産を選び、時間を味方につけ、前提が崩れていないかを観測しながら持ち続けるだけでも、目的地へ近づける場合があります。

もちろん、船にも沈没の危険はあります。選んだ資産が間違っていれば、そもそも海へ出るべきではなかったことになります。一つの資産へ集中するほど、旅客機よりも判断責任は重くなります。実際、私も何度か沈没しかけました。

それでも、戦い続けることだけが投資ではありませんでした。

この拍子抜けする感覚は、長く相場を経験した人ほど理解できるかもしれません。

難しい方法は、目的になりやすい

戦闘機は魅力的です。FX、信用取引、先物、オプション、短期売買には、知識を使って相場を攻略する面白さがあります。新しい戦略を理解したときには、こんな方法があったのかと目からうろこが落ちることもあります。

だからこそ、注意しなければなりません。

本来の目的は資産を増やすことだったはずなのに、いつの間にか「難しいものを操縦できる自分」を証明することが目的へすり替わる場合があります。

技術を持つと、使いたくなります。戦う必要のない相場でも出撃したくなり、利益が足りているのに、さらに勝負を始めたくなります。

しかし、戦闘機を操縦できることと、戦闘機に乗る必要があることは別です。

退屈になると、人は不要な戦争を始める

旅客機の移動も、船の航海も、戦闘機に比べれば退屈です。毎日売買する必要はなく、勝負の興奮もありません。長い時間、何も起きていないように見えることもあります。

しかし、その退屈さは、運用が目的に沿っている証拠かもしれません。

相場で暇を感じると、人は必要のない売買を始めます。利益は十分なのに、もっと増やそうとしてレバレッジをかける。長期保有で順調に進んでいるのに、短期の値動きを見て余計な進路変更をする。過去に身につけた技術を試したくなり、必要のない戦場へ戻ってしまう。

航海で大切なのは、毎日激しく舵を切ることではありません。進むべき方向が変わっていないなら、同じ航路を維持することです。

何もしない時間も、航海の一部です。

投資の目的は、目的地へ着くことである

戦闘機には、戦闘機の役割があります。短期間で超過収益を狙い、上昇相場でも下落相場でも利益を取りに行くなら、高度な技術が必要になる場面があります。

旅客機には、旅客機の役割があります。市場全体の成長を信じ、余計な判断を減らし、長期間仕組みに乗り続けるなら、非常に合理的な方法です。

船にも、船の役割があります。自分で資産を選び、自分の仮説を持ち、環境の変化を観測しながら航路を決めたい人には、船という選択肢があります。

旅客機でも生き残れます。船だから生き残れるわけではありません。

違うのは、生き残り方です。

旅客機は、優れた仕組みに乗り、目的地まで運んでもらう。

船は、自分で海図を読み、自分の責任で航路を選びながら進む。

私は最後に、船を選びました。

戦うことより、観測することを選びました。速く飛ぶことより、自分で航路を決めることを選びました。

投資の目的は、操縦技術を証明することではありません。

生き残り、自分が選んだ目的地へ着くことです。

そして、高度な技術を持ちながら、必要のない場面では使わない。

それこそが、長い相場経験の末に身につける、最後の技術なのかもしれません。


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